・・・不道徳の時間。
〜あらすじ〜
中学生の住田は川べりの橋の下で貸しボート屋を営む母親と暮らしている。大きな幸せはいらないかわりに大きな不幸にも見舞われずにただただ普通に暮らしてゆきたい。誰よりもそう願う住田だったが、ある朝目覚めると母親が居ない。
捨てられた…
ただ普通に暮らしてゆければそれでよかったのに、普通でいられなくなってゆく…
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ヒミズの登場人物たち
住田
本作の主人公。目立たず、人に迷惑をかけず、ただ平穏に暮らしたいと願う中学生。両親は離婚しており母親と暮らしているが、たまに顔を見せる父親のことを嫌い、自分に置かれた状況の元凶は父親であるとして憎んでもいる。
正造
住田と仲の良い同級生。手癖が悪く、それ故に友達も出来なくトラブルも多い。自分の欲望に忠実で、後先を考えられない幼い部分が強く残っている。一緒に遊んでいる友達の財布までスるのでよく住田に注意をされている。
茶沢さん
住田や正造と同級生で、住田に想いを寄せており積極的にアプローチを仕掛けている。住田に近づくことでトラブルに巻き込まれてしまうが、自分の中だけで消化する強さを持っている。
ヒミズの見どころ
古谷実作品の4作目。稲中卓球部に代表されるギャグは影を潜め、かわりに人間のやましい心や反社会的な面、突然降って湧いたような小さな不幸や犯罪など、終始重いテーマが有り、その中にあっても主人公は正しくあろう、人に迷惑をかけずに生きようと悩み、もがき続ける。少しずつ、少しずつ追い込まれてゆき、目を背けていたことをついに受け入れる心境になってゆく…
ヒミズの個人的な感想
個人的にめちゃめちゃ好きな漫画で、この漫画で古谷実作品が好きになった。古谷実といえば、デビュー作の稲中卓球部が有名で、連載当時ものすごい人気作だった。たしかにめちゃ面白いギャグ漫画で、楽しく読んでいたのだが、周りほどハマれなかった。いや、独特な味があってめちゃめちゃ面白いギャグ漫画なんですけどね。そういった、ギャグ漫画の人ってイメージがあったから、尚更このギャップにガツンとやられたのもあるし、この作品単体で見て、もちろんずば抜けて面白い。稲中のようなギャグでドカーンと笑いを取って勢いがズバーっとある漫画ではないけれど、読むほどに惹き込まれてゆくなんだか奥底にふつふつとしたエネルギーがある。
ちなみに実写映画化もされていますね。私は好きな漫画が実写化やアニメ化されると、期待して観てガッカリするのが嫌なので基本的に観ません。なので、ヒミズの実写版も観ていません。でもなんか、一周回ってもう今更ながら観てみてもいいかもしれない。うん、今度観てみよう。
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・・・余談ですが、作品名の「ヒミズ」意味わかりますか?
古谷実作品は、パッと見意味不明な作品名が多いですよね。ヒメアノ〜ルとか、ゲレクシスとか。
まずは本作を読んでみて、作品名の意味が気になるならそれから調べてみると良いと思います。
ヒミズを読み終わって、タイトル気になって、調べてみて、ああなるほど、と・・・
マンガを読めばタイトルの意味も繋がりますし、あえて誰でもすぐに分かる同じ意味を持つ言葉にしなかったあたり、古谷実のセンスというか遊び心のようなものを感じますね。